イオン結合と結晶

 

【イオン結合】

 陽イオンと陰イオンは,電気的な力(静電気力またはクーロン力という)によって結合する。これをイオン結合という。イオン結合によって,生じる結晶がイオン結晶である。 

 

 



例題
 次のイオンからなる物質を化学式で書け。

(1)炭酸ナトリウム  (2)硫酸鉄(V)  (3)酸化カルシウム  (4)硝酸銅(U)

 

(1) Na2CO3  (2) Fe2(SO4)2  () CaO  () Cu(NO3)2

 

例題 次の物質の中から,イオンからなる物質をすべて選べ。

  @ 二酸化炭素 A 硫酸ナトリウム  B 水  C 塩化アンモニウム  D 硝酸カリウム

 

   A,C,D (陰イオンと陽イオンに分けれれるものを選ぶ)

 

【イオン結晶】

結晶の構成粒子の配列を示したものを結晶格子といい,その最小単位を単位格子という。陽イオンと陰イオンが11イオン結晶には塩化ナトリウム型,塩化セシウム型,硫化亜鉛型がある。

 
 


 

イオン結晶の安定性

 陽イオンと陰イオンが11の結晶がいずれの構造をとるかは,構成する陽イオンと陰イオンの大きさの比によって決まる。それぞれのイオンは反対符号のイオンと接していて,その数が多いほど安定である。つまり,配位数が大きいほど安定である。不安定な構造とは,陰イオンに対して陽イオンが小さくなりすぎる構造で,この場合,陰イオンが接してしまう。
 
 

例題 塩化ナトリウムの結晶の単位格子を図に示した。

(1) 単位格子に含まれるナトリウムイオン,塩化物イオン
 の数はそれぞれ何個か。


(2) 1個のNaのすぐそばにあるClは,中心間距離が何
 nm
のところに何個か。√21.4,√31.7

(3) 1個のNaのすぐそばにあるNaは,中心間距離が何
 nm
のところに何個か。

 
(4) 1molの塩化ナトリウムの結晶の体積は何cm3か。5.63176 アボガドロ定数=6.0×1023/mol〕 

(5) 塩化ナトリウムの結晶の密度は何g/cm3か。Na23Cl35.5

(6) 半径Rの陰イオンと半径rの陽イオン(Rr)が接し,さらに陰イオンどうしも互いに接しているNaCl型構造をつくって
 いるとき, r/Rの値はいくらか。また,この結晶が不安定になるのは,この値より小さいときか,大きいときか。

 

(1) Na4個,Cl4個 (2) 6個。接しているNaClの中心距離なので,左下図の x なので, x 0.56/20.28nm

(3) 12個。最も近いNaどうしの距離は,右図の yなので,y0.28×1.40.3920.39nm〕 

(4) 問題の格子の体積は,一辺が0.56nm(=5.6×108cm (1nm1×106o) )なので,体積は (5.6×108)3cm3

  この中にNaCl4個ずつ入っているので,NaCl 4個分の体積となる。NaCl 1mol(=6.0×1023個)では,   

  (5.6×108)3×6.0×1023/4=26.426cm3

(5) (4)より,NaCl 1mol(=58.5g)の体積は26.4cm3なので,密度は58.5/26.42.212.2g/cm3

(6) 陰イオンと陽イオンが接触し,さらに陰イオンどうしも接触すると,右下図のようになる。これより,

4R(2R2r)×√2r/R=√2−1=1.410.40。陰イオンが接していない方が安定なので,

陽イオンが大きいほど安定(小さいほど不安定)になる。したがって,r/R0.40より小さいと

結晶は不安定になる。